2003〜2022 | プレミアリーグの勢力図を塗り替えた20年間
チェルシー・アブラモビッチ時代——ロシア人億万長者が変えたサッカーの「お金」
2003年夏、ロシア人億万長者ロマン・アブラモビッチがチェルシーを買収した。この出来事は単なるクラブ売却ではなく、サッカー界全体の「お金の流れ」を根本から変えるターニングポイントとなった。潤沢な資金でスター選手を集め続けた20年間の栄光と、その終焉の物語。
2003年夏の衝撃——サッカービジネスの転換点
2003年7月、ロマン・アブラモビッチは約1億4000万ポンドでチェルシーを買収した。それまでチェルシーは中堅クラブに過ぎなかった。しかしアブラモビッチが就任した最初の夏だけで、エルナン・クレスポ、クロード・マケレレ、ジョー・コールなど総額1億ポンド以上の補強を行った。
サッカー界は震えた。「こんな規模の投資をするオーナーがいるのか」という驚きは、クラブ経営の概念を変えた。その後のマンチェスター・シティ(アブダビ資本)、パリ・サンジェルマン(カタール資本)といった「オイルマネークラブ」の台頭は、チェルシーが切り開いた道の延長線上にある。
翌2004年にジョゼ・モウリーニョが就任し、「スペシャル・ワン」とチェルシーの黄金時代が始まった。
モウリーニョ時代のプレミア連覇
2004-05、2005-06シーズン、チェルシーはプレミアリーグを連覇した。モウリーニョのチームは守備的だが組織的で、ジョン・テリー、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバという主軸が攻守のバランスを完璧に体現した。
2004-05シーズンは91ポイントという当時のプレミア新記録を樹立。失点わずか15という守備の堅牢さは、それまでのプレミアリーグには存在しなかった水準だった。
モウリーニョはその後2007年に一度チェルシーを去り(その後2013年に復帰)、アンチェロッティ、グアルディオラ(マンCのため)らとは別の路線で「結果重視」のサッカーを体現し続けた。
2012年CL優勝と「アブラモビッチの夢」の完成
アブラモビッチがチェルシーを買収した最大の動機はCL制覇とされた。2012年、その夢がついに実現する。地元バイエルンとのホームでの決勝で、チェルシーはペナルティ終了間際のドロッグバのゴールで追いつき、PK戦を制した。
この勝利でチェルシーは念願のCLタイトルを獲得。アブラモビッチが費やした総額数十億ポンドの投資が、ビッグイヤーという形で結実した瞬間だった。
2022年、ロシアのウクライナ侵攻を受けた制裁によりアブラモビッチはクラブを売却を余儀なくされた。約19年の治世の中で、CL2回、プレミア5回、FA杯5回と空前の黄金時代を築いたこの期間は、現代サッカー史における最も劇的な「お金と勝利」の物語として永遠に記録される。