2008〜2012 | 6冠の奇跡と「ポゼッション革命」
グアルディオラのバルセロナ——「ティキタカ」が変えたサッカーの常識
2009年、バルセロナは1シーズンで6つのタイトルを制覇した。前例のない「セクステ(6冠)」を達成したペップ・グアルディオラのチームは、ボールを保持し続けることで相手を支配する「ティキタカ」を世界に広め、その後10年以上のサッカー戦術の方向性を決定づけた。
カンテラ出身の新監督が変えたすべて
ペップ・グアルディオラは2008年、バルセロナBチームの監督からトップチームの指揮官に昇格した。当時37歳——監督としてはほぼ無名で、メディアの多くは懐疑的だった。
就任直後、グアルディオラはロナウジーニョ、デコ、エトー(後に残留)といった実績あるスターを放出し、チームを根本から作り直した。その代わりに彼が選んだのは、カンテラ育ちの若手と自分がかつてプレーしたポジション(ボランチ)での哲学の体現者たちだった。
メッシを偽9番として起用し、シャビとイニエスタが中盤をコントロールする4-3-3。ボールを失わず、奪ったら素早くつないで相手を走らせる——このスタイルは「ティキタカ」と呼ばれ、世界中でコピーされていった。
2009年セクステと「最強チーム」の誕生
2008-09シーズン、バルセロナはリーガ、コパ・デル・レイ、CL、スーペルコパ・デ・エスパーニャ、UEFAスーパーカップ、クラブW杯の6冠を達成した。1シーズンで6つのタイトルを制した欧州クラブは史上初だった。
CL決勝のローマ戦では、バルサが2-0で勝利。この試合でのボールポゼッションは66%に達し、相手を完全に封じ込めた。世界中のサッカーファンが「こんなサッカーが存在するのか」と目を丸くした。
翌2009-10シーズンも同様に圧倒的な強さを見せ、2010-11シーズンにはCLを再制覇。グアルディオラ体制4年間で4度のリーガ優勝、2度のCL優勝という圧倒的な記録が残された。
ティキタカの遺産と「戦術的革命」
グアルディオラが残した最大の遺産は、タイトルではなく「考え方の変革」かもしれない。ティキタカの台頭以降、世界中のチームがポゼッション戦術を研究し始め、育成年代でのパススタイルの強調が常識となった。
批判もあった。「退屈」「相手を疲弊させるだけ」という声に対し、グアルディオラは「ボールを持てば失点しない。ゴールを奪えるチャンスも増える。これが最も論理的なサッカーだ」と答えた。
バルサを去った後、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティでもグアルディオラは同じ哲学を貫き、各国で圧倒的な記録を残した。彼が種を蒔いたティキタカは、形を変えながら今も世界中のピッチで生き続けている。