2022年カタール | 「神」が地上に降りた36日間

メッシとアルゼンチン2022年W杯——35歳が叶えた最後にして最大の夢

2026年7月約8分
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Hara Tech 編集部

欧州サッカー専門メディア「ultrasrei.com」編集部。プレミアリーグ・ラ・リーガ・セリエAを中心に、戦術・歴史・選手考察を発信。

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2022年12月18日、カタールのルサイル・スタジアム。リオネル・メッシはアルゼンチンをW杯優勝に導き、「バロンドールを7度取りながらW杯がない」という批判に永遠の終止符を打った。延長・PK戦という最もドラマチックな形で幕を閉じたこの決勝は、サッカー史上最高の試合の一つとして語り継がれる。

「最後のW杯」への覚悟と開幕の衝撃

2022年大会は35歳のメッシにとって最後のW杯になることが確実視されていた。しかしグループリーグ初戦、サウジアラビアに1-2で敗れるという衝撃の幕開け。優勝候補筆頭の敗北にアルゼンチン中が凍りついた。しかしここからアルゼンチンとメッシは別人のように覚醒した。

その後の5試合、メッシは決定的な働きを続けた。準々決勝オランダ戦ではゴールとアシストで勝利に貢献し、PK戦後の相手への挑発的なジェスチャーも話題となった。35歳が最後の大舞台で「若い情熱」を見せた瞬間だった。

決勝——サッカー史上最も劇的な90分

決勝のフランス戦、アルゼンチンは前半から圧倒し2-0とリード。しかし後半残り10分でエムバペが2ゴールを決め2-2に。延長でメッシが勝ち越したがエムバペがPKで追いつき3-3。PK戦でアルゼンチンが4-2で制した。

メッシはこの試合で2ゴール1アシスト、大会通算7ゴール3アシストで得点王と大会MVPを受賞。36歳のGKエミリアーノ・マルティネスのPKセーブも歴史に刻まれた。試合全体として「神の試合」と評され、7-7(延長含む)というスコアの応酬は現代W杯史に類を見ない。

メッシがトロフィーを掲げた瞬間、アルゼンチンでは全国で祝賀の声が上がった。「バロンドール選手がW杯を取れない」という長年の批判が消え去り、サッカー史上最も完全な選手としてのメッシの評価が確立された夜だった。

「神」と呼ばれる理由——記録と記憶

リオネル・メッシは国際Aマッチ通算109ゴールというアルゼンチン記録を保持し、W杯通算13ゴール(史上最多)、バロンドール8度受賞という前人未到の記録を持つ。しかしファンが彼を「神」と呼ぶのは数字だけの理由ではない。

彼のプレーには、サッカーが「競技」を超えて「芸術」になる瞬間が宿っている。ドリブル時の重心の低さ、ボールを持った時の周囲の把握、パスとシュートの選択の正確さ——すべてが人間の域を超えているように見える。2022年の優勝は、そのすべてに「完璧な結末」を与えた。