戦術分析2026年8月13日

クロース不在の亡霊

デポルティーボ対マドリー — テレサ・エレーラ杯 図解戦術レビュー

両チームの基本配置

モウリーニョは4-2-3-1を採用。GKルニン、右SBダンフリース、CBリュディガーとハイセン、左SBカレーラス。ダブル・ピボーテにベルナルド・シウバとカマヴィンガ、右ウイングにブラヒム(ただしインサイド指示)、トップ下にギュレル、左ウイングにヴィニシウス、1トップはエンドリッキ。バルベルデはベンチスタートだった。

デポルティーボは4-4-2のミドルブロックを採用。センターハーフのソリアーノとアマトゥッチが中盤の心臓部として機能した。

ルニンダンフリースリュディガーハイセンカレーラスベルナルドカマヴィンガブラヒムギュレルヴィニシウスエンドリッキレオ・ロマンナバロエデヌービアンヘリーニョルイスミアマトゥッチソリアーノカリージョオーバメヤンンソンゴ

前半基本配置:マドリー 4-2-3-1(青)vs デポルティーボ 4-4-2(黄)

ビルドアップの機能不全——詰まる中央

最大の問題は、マドリーのビルドアップだった。トニ・クロースの2024年引退後、ルカ・モドリッチの退団、そしてロドリの獲得失敗。組み立ての司令塔が不在のままシーズンを迎えたマドリーにとって、デポルティーボの守備ブロックを崩すことは容易ではなかった。

ベルナルド・シウバとカマヴィンガのダブル・ピボーテは、本来の特性上この役割に向かない。ベルナルドはトップ下・インサイドハーフ・偽ウイング的な選手、カマヴィンガは縦への推進力があるが組み立ての中心ではない。

リュディガーハイセンベルナルドカマヴィンガギュレルダンフリースカレーラスオーバメヤンンソンゴルイスミアマトゥッチカリージョ封鎖

ビルドアップの詰まり:デポルティーボFWが中央パスコースを遮断、CBは横パスしか選べない

デポルティーボのFW2枚(オーバメヤンとンソンゴ)がベルナルドとカマヴィンガの間にポジションを取ることで、CBからダブル・ピボーテへの縦パスを遮断。マドリーはサイドへの遠回り(U字パス)か、ロングボールを選択するしかなかった。守備ブロックのスライドの時間が稼げるため、デポルティーボには余裕が生まれる。

さらにモウリーニョはブラヒムに「インサイドに入ってもう一人のセンターハーフとして機能せよ」と指示していた。ブラヒム本人も「インサイドに入り込んでビルドアップを助けるよう言われていた」と語っている。しかし右サイドのスペースが生まれても、ダンフリースが高い位置を取るための連動は生まれなかった。

ヴィニシウスは左サイドで単独の仕掛けを繰り返したが、W杯後の疲労もあり2023-24シーズンの爆発的なスピードは影を潜めた。エル・パイスは「2024年バロンドール2位の輝きとは程遠い、慎重で物足りない内容」と評した。

唯一の得点——アクシデントとインスピレーション

前半アディショナルタイム、コーナーキックからルーカス・ヌービのヘディングをルニンがブロックし、そのまま手で50m超のロングスローを前線へ投じた。ブラヒムが胸でトラップし、膝でコントロール、右足でフィニッシュ。デポルティーボの守備が大きく押し上がった瞬間を突いたカウンターの産物だった。

モウリーニョ時代のマドリーを知るファンにとって、このシーンは懐かしいものだったはずだ。カシージャスがセービング直後に素早く投げ、クリスティアーノ・ロナウドが相手の帰陣前に仕留める——2010〜13年のベルナベウで何度も見た光景が、ルニンとブラヒムで再現された。これは偶然ではない。「ボールを奪った瞬間に前へ」という縦への速さは、モウリーニョが植え付ける最初の文化だ。ビルドアップが機能しなかった90分の中で、唯一モウリーニョらしい得点だった。

後半の修正——トリプルボランチの試み

ハーフタイムに複数の選手交代を行ったモウリーニョは、後半の配置を大きく変えた。ギュレルをバルベルデと交代し、カマヴィンガ・ベルナルド・シウバ・バルベルデのトリプルボランチ(trivote)を形成。右SBにはトレントが入り、ダンフリースを1列前の右ウイングへ押し出した。エンドリッキに代わりエスピが前線に入り、ブラヒムに代わりトレントが起用された。

ルニントレントマリオ・Rハイセンカレーラスバルベルデカマヴィンガベルナルドダンフリースヴィニシウスエスピナバロロウレイロバルシアクアリャッタメジャビジャレスロドリゲスエダチョウリケビン・Sヒーセルハルト

後半トリプルボランチ:バルベルデ・カマヴィンガ・ベルナルドの3枚で中盤を制圧

このトリプルボランチは一定の効果を見せた。中盤の人数が増えることでボールの循環が改善し、デポルティーボのブロックがスライドする時間を奪えるようになった。エスピもデポルティーボ守備陣を苦しめたが、惜しくもオフサイドで幻のゴールに終わった。

しかし後半もマドリーは崩し切れず、試合終盤はデポルティーボに押し込まれる展開に。ルニンの2連続ビッグセーブがなければ、勝ち点3は危うかった。

課題と展望

① オーガナイザー不在問題

引いた相手を崩すための司令塔がいない。ベルナルド・シウバをトップ下に置く4-2-3-1の方が本人の特性を活かせる可能性がある。6番タイプの補強か、バルベルデをより低い位置で固定する運用が求められる。

② 前半主導→後半失速のパターン

プレシーズン3試合で共通して見られる傾向だ。フィットネスの問題か、戦術設計の問題か、開幕前に修正が必要だ。

③ ベリンガム合流後の変化

エムバペ・ベリンガム・ディオマンデ・ククレジャが合流すれば戦力は大きく変わる。特にベリンガムのトップ下起用により、ダブル・ピボーテの一角にバルベルデを固定しやすくなり、ビルドアップの問題も改善される可能性がある。

モウリーニョは試合後「来週から本番が始まる」と言い切った。満月が訪れるまで、狼はバルデベバスで爪を研ぎ続ける。リーガ開幕は8月22日、エスパニョール戦だ。

※本記事はAS・MARCA・El País各紙の報道を元にultrasrei.comが独自に分析したものです。