クロース不在の亡霊
デポルティーボ対マドリー — テレサ・エレーラ杯 図解戦術レビュー
■両チームの基本配置
モウリーニョは4-2-3-1を採用。GKルニン、右SBダンフリース、CBリュディガーとハイセン、左SBカレーラス。ダブル・ピボーテにベルナルド・シウバとカマヴィンガ、右ウイングにブラヒム(ただしインサイド指示)、トップ下にギュレル、左ウイングにヴィニシウス、1トップはエンドリッキ。バルベルデはベンチスタートだった。
デポルティーボは4-4-2のミドルブロックを採用。センターハーフのソリアーノとアマトゥッチが中盤の心臓部として機能した。
📋✅ ¡Nuestro XI inicial! @RCDeportivo
— Real Madrid C.F. (@realmadrid) August 12, 2026
前半基本配置:マドリー 4-2-3-1(青)vs デポルティーボ 4-4-2(黄)
■ビルドアップの機能不全——詰まる中央
最大の問題は、マドリーのビルドアップだった。トニ・クロースの2024年引退後、ルカ・モドリッチの退団、そしてロドリの獲得失敗。組み立ての司令塔が不在のままシーズンを迎えたマドリーにとって、デポルティーボの守備ブロックを崩すことは容易ではなかった。
ベルナルド・シウバとカマヴィンガのダブル・ピボーテは、本来の特性上この役割に向かない。ベルナルドはトップ下・インサイドハーフ・偽ウイング的な選手、カマヴィンガは縦への推進力があるが組み立ての中心ではない。
ビルドアップの詰まり:デポルティーボFWが中央パスコースを遮断、CBは横パスしか選べない
さらにモウリーニョはブラヒムに「インサイドに入ってもう一人のセンターハーフとして機能せよ」と指示していた。ブラヒム本人も「インサイドに入り込んでビルドアップを助けるよう言われていた」と語っている。しかし右サイドのスペースが生まれても、ダンフリースが高い位置を取るための連動は生まれなかった。
ヴィニシウスは左サイドで単独の仕掛けを繰り返したが、W杯後の疲労もあり2023-24シーズンの爆発的なスピードは影を潜めた。エル・パイスは「2024年バロンドール2位の輝きとは程遠い、慎重で物足りない内容」と評した。
■唯一の得点——アクシデントとインスピレーション
前半アディショナルタイム、コーナーキックからルーカス・ヌービのヘディングをルニンがブロックし、そのまま手で50m超のロングスローを前線へ投じた。ブラヒムが胸でトラップし、膝でコントロール、右足でフィニッシュ。デポルティーボの守備が大きく押し上がった瞬間を突いたカウンターの産物だった。
■後半の修正——トリプルボランチの試み
ハーフタイムに複数の選手交代を行ったモウリーニョは、後半の配置を大きく変えた。ギュレルをバルベルデと交代し、カマヴィンガ・ベルナルド・シウバ・バルベルデのトリプルボランチ(trivote)を形成。右SBにはトレントが入り、ダンフリースを1列前の右ウイングへ押し出した。エンドリッキに代わりエスピが前線に入り、ブラヒムに代わりトレントが起用された。
後半トリプルボランチ:バルベルデ・カマヴィンガ・ベルナルドの3枚で中盤を制圧
このトリプルボランチは一定の効果を見せた。中盤の人数が増えることでボールの循環が改善し、デポルティーボのブロックがスライドする時間を奪えるようになった。エスピもデポルティーボ守備陣を苦しめたが、惜しくもオフサイドで幻のゴールに終わった。
しかし後半もマドリーは崩し切れず、試合終盤はデポルティーボに押し込まれる展開に。ルニンの2連続ビッグセーブがなければ、勝ち点3は危うかった。
■課題と展望
① オーガナイザー不在問題
引いた相手を崩すための司令塔がいない。ベルナルド・シウバをトップ下に置く4-2-3-1の方が本人の特性を活かせる可能性がある。6番タイプの補強か、バルベルデをより低い位置で固定する運用が求められる。
② 前半主導→後半失速のパターン
プレシーズン3試合で共通して見られる傾向だ。フィットネスの問題か、戦術設計の問題か、開幕前に修正が必要だ。
③ ベリンガム合流後の変化
エムバペ・ベリンガム・ディオマンデ・ククレジャが合流すれば戦力は大きく変わる。特にベリンガムのトップ下起用により、ダブル・ピボーテの一角にバルベルデを固定しやすくなり、ビルドアップの問題も改善される可能性がある。
モウリーニョは試合後「来週から本番が始まる」と言い切った。満月が訪れるまで、狼はバルデベバスで爪を研ぎ続ける。リーガ開幕は8月22日、エスパニョール戦だ。