2021〜2022 | 「ドン・カルロ」が起こした現代最大のジャイアントキリング

アンチェロッティの奇跡——2021-22シーズン、誰も予想しなかったCL制覇

2025年2月約8分

PSGのムバッペ、チェルシーのルカクとハフェルツ、シティのデ・ブライネ——最強の敵が次々と現れる中、レアル・マドリードは奇跡の連続でチャンピオンズリーグを制した。カルロ・アンチェロッティが見せた采配の神髄と、ベルナベウの「魔力」を解き明かす。

「終わった」と思われた男の復帰

2021年夏、レアル・マドリードはジネディーヌ・ジダンの退任後、新監督としてカルロ・アンチェロッティを迎えた。2013年にマドリードを率いてCLを制覇した「ドン・カルロ」の復帰は、一定の評価を受けつつも、懐疑的な目線も少なくなかった。2019年にナポリを解任され、2021年にはエバートンも解任されていた。「もう時代遅れではないか」という声もあった。

しかしアンチェロッティは静かに言った。「私はこのクラブをよく知っている。選手たちを信頼し、彼らが輝ける環境を作るだけだ」。その言葉通り、彼は選手を型にはめず、個々の長所を最大限に引き出す采配で、シーズンを通じてチームを変貌させていった。

PSG戦の逆転劇——ムバッペの夢を打ち砕いたロス・ブランコス

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦の相手はパリ・サンジェルマン。メッシ、ネイマール、ムバッペという世界最高峰の3トップを擁するPSGに、マドリードはアウェーで1対0と敗れた。第2戦も後半まで0対1でビハインドを負っていた。

試合終了まで17分、ベルナベウは静まり返っていた。しかしそこから起きたことは、現代サッカー史に残る逆転劇だった。カリム・ベンゼマが信じられないハットトリックを決め、3対1で逆転勝利。スタジアムは爆発した。後に「ベルナベウの魔力」と呼ばれるこのシーンは、YouTube上で何千万回も再生された。

チェルシー、シティ連破——「不可能を可能にした」奇跡の連続

PSGの次はチェルシー。前年のCL王者を相手に、またしても土壇場での逆転劇を演じた。準決勝のシティ戦は特に壮絶だった。第2戦、マドリードは82分まで敗退寸前だった。しかしロドリゴの2ゴールとベンゼマのPKで奇跡の逆転——「ロドリゴの2分間」として語り継がれる場面となった。

アンチェロッティはこれらの試合後、必ずこう言った。「選手たちを信じていた。彼らはマドリードを愛しているから、最後まで戦える」。戦術論ではなく、人間への信頼を軸にした言葉。これがアンチェロッティ式マネジメントの核心だった。

決勝ではリバプールに1対0で勝利。4度目のCL制覇を成し遂げた。試合後、ベンゼマはバロンドールを確実なものにし、アンチェロッティは「2度CL制覇を果たした唯一の監督」という金字塔を打ち立てた。

「優しさ」という最強の武器

アンチェロッティのマネジメントスタイルは、現代の指導者論に大きな示唆を与える。厳格な規律よりも選手との対話、戦術の押し付けよりも個性の尊重——彼の「優しさ」は弱さではなく、最大の強さだった。

クロースは言った。「ドン・カルロのもとではプレーするのが楽しかった。彼は私たちを大人として扱ってくれた」。モドリッチも、カゼミロも、ベンゼマも——キャリア晩年に差し掛かった選手たちが、アンチェロッティのもとで最高のパフォーマンスを取り戻した。それがこのシーズンの奇跡の正体だった。