2012年 | スペインに敗れた決勝と、それでも輝いたレジスタの美学

ピルロのユーロ2012——34歳の「老いた詩人」が支配したトーナメント

2026年8月約7分
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Hara Tech 編集部

欧州サッカー専門メディア「ultrasrei.com」編集部。プレミアリーグ・ラ・リーガ・セリエAを中心に、戦術・歴史・選手考察を発信。

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2012年欧州選手権、アンドレア・ピルロは34歳でイタリア代表の中心として大会を席巻した。グループリーグのドイツ戦でのロングパス、準決勝イングランド戦でのチップキックPK——年齢を感じさせない支配力で見る者を魅了した。決勝でスペインに完敗したことも含め、あの大会のピルロは「サッカーの詩」そのものだった。

グループリーグ、ドイツを翻弄した「神のパス」

2012年ユーロのグループリーグ、イタリア対ドイツ。この試合でのピルロのパフォーマンスは、大会ベストパフォーマンスとして多くのメディアに選ばれた。自陣深くからのロングレンジパス、狭いスペースでのボール捌き、そして絶妙なタイミングの縦パス——34歳のMFが試合全体を支配した。

ピルロはこの試合で6km以上走ったが、見た目には「ゆっくり歩いている」ように見えた。これがピルロの最大の特徴だ。動かないように見えて、ボールが来る前に正しい位置にいる。エネルギーを使わずにゲームを支配する——まさに「レジスタ(指揮者)」の真骨頂だった。

準決勝イングランド戦——チップキックPKの衝撃

準決勝はイングランドとのPK戦にもつれ込んだ。ピルロは最初のキッカーとして登場し、助走をつけて——ゆっくりと——チップキック(浮かし球)でゴールを決めた。

このPKは「現代サッカー史上最もクールなPK」として今も語り継がれる。GKジョー・ハートは完全に動きを止められ、ただボールがゆっくりとゴールに吸い込まれるのを見ていた。34歳のMFが、天下のPK戦で「おどろかすPK」を選択できる精神的な強さと、それを成功させる技術力——これがピルロという選手の本質だった。

イタリアはPK戦を制して決勝へ。ピルロの名は、このキックとともに欧州中のサッカーファンの記憶に刻まれた。

決勝のスペインへの完敗と「美しい大会」

決勝でイタリアはスペインに0-4で敗れた。連覇中のスペインは文字通り別次元で、シャビ・イニエスタ・ダビド・シルバのポゼッションの前にイタリアは為すすべがなかった。

しかしこの大会のピルロへの評価は、準優勝でも最高だった。「大会最優秀選手」に選出されたピルロは、「負けたチームから大会MVPが出る」という珍しい事例となった。それほど、彼のプレーは結果を超えたところで輝いていた。

スペインの時代に、34歳の「古典的なレジスタ」が大会を支配する——この事実は、「サッカーに正解はない」ということの美しい証明だ。ピルロがユーロ2012で見せた美学は、サッカーが持つ多様な「美しさ」の形の一つとして、永遠に参照され続ける。