1999〜2007 | インヴィンシブルズを率いた無敵の9番

ティエリ・アンリ——アーセナルが生んだ最高のストライカー

2025年5月約7分

2003-04シーズン、アーセナルはプレミアリーグを38試合無敗で制覇した。その中心にいたのがティエリ・アンリだ。フランス生まれのウイングがセンターフォワードへと進化し、欧州最高のストライカーになるまでの軌跡を追う。

ユベントスで燻り、ヴェンゲルが再生させた天才

ティエリ・アンリがアーセナルに加入する前、彼はユベントスで不遇の時代を過ごしていた。左ウイングとして起用されながらも、イタリアの守備的なサッカーに馴染めず、わずか1シーズンで移籍を余儀なくされた。「もう欧州トップでは難しいかもしれない」という声さえあった。

1999年夏、アーセン・ヴェンゲル監督がアンリをセンターフォワードにコンバートした。この決断が、一人の才能を解放した。ウイングとして培ったスピードと技術を、最前線で自由に使えるようになったアンリは、プレミアリーグを席巻し始めた。

ヴェンゲルの目には、アンリが持つ潜在能力がはっきりと見えていたのだろう。「彼の才能を正しい場所で使えば、世界最高の選手になれる」——その確信が正しかったことを、アンリはゴールで証明し続けた。

インヴィンシブルズ——38試合無敗の奇跡

2003-04シーズン、アーセナルはプレミアリーグ38試合を26勝12分0敗という成績で制覇した。「インヴィンシブルズ(無敵軍団)」と称されたこのチームの象徴がアンリだった。シーズン30ゴール、アシストも二桁を記録し、攻撃のすべてが彼を中心に回っていた。

特筆すべきはその多彩さだ。左足のアウトサイドで決めるゴール、GKとの一対一で冷静に流し込むゴール、ゴールから角度のない位置からニア上を突くゴール——アンリのゴールには「型」がなかった。それが相手GKやDFを最も苦しめた理由だ。

このシーズンの無敗記録は20年以上たった現在も破られていない。マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシーがどれほど強くなっても、「38試合無敗」という記録の前では頭を垂れるしかない。

アーセナル歴代最多得点——228ゴールの軌跡

アンリはアーセナルに8年間在籍し、228ゴールを記録してクラブ歴代最多得点者となった。2006年にはバルセロナへ移籍したが、2011-12シーズンに期限付きで古巣に戻り、かつてのスタジアムであるエミレーツで再び歓声を浴びた。

彼がアーセナルのファンにとって特別な存在である理由は得点数だけではない。ピッチ上での振る舞い、チームへの献身、若い選手への姿勢——アンリはアーセナルというクラブの哲学そのものを体現していた。

現在もアーセナルのレジェンドたちの中で、アンリの名前は常に最初に挙がる。ハイバリーからエミレーツへ、スタジアムは変わっても、アンリへの愛情は変わらない。